2022-08-30
安全登山学校

ココヘリ安全登山学校への想い|国際山岳ガイド・天野和明さん

鷲尾 太輔
山岳ライター・登山ガイド

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。登山ガイド・登山教室講師・山岳ライターなど山の「何でも屋」です。登山歴は30年以上、ガイド歴は10年以上。得意分野は読図(等高線フェチ)、チカラを入れているのは安全啓蒙(事故防止・ファーストエイド)。山と人をつなぐ架け橋をめざして活動しています。 公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅠ 総合旅行業務取扱管理者

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日本人初のピオレドール賞受賞者・天野和明さん

天野和明さん

登山のアカデミー賞と言われるフランスの山岳賞・ピオレドール賞。この賞を2008年に日本人として初めて受賞した登山家のひとりが、天野和明さんです。

数々の高所・無酸素登山の記録を打ち立てながら、2010年に石井スポーツ登山学校の講師に就任。2016年からは同校校長として一般登山者へのスタンダードな登山知識の伝達や後進の指導・育成に力を注ぐ天野さんに、ココヘリ安全登山学校へ寄せる想いを伺いました。

意欲的な参加者が多いココヘリ安全登山学校

天野さんが登山学校を通じて感じる“やり甲斐”

石井スポーツ登山学校など様々な場で講師を勤めてきた天野さん。クライマーとして一流の実績もありながら、敢えて積極的に一般登山者へ対峙する理由を伺いました。

ピオレドール賞を受賞したクライマーの中には、さらに先鋭的な登攀にチャレンジする人も多いですよね。天野さんが登山学校に情熱を傾ける理由は何でしょう。

天野さん:登山学校に来る方は、総じて登山に対して前向きなんです。スキルアップしたかったり、現状の知識・技術に不安を感じていたり。自発的に情報を入手して、受講してくれる……そういう人に教えることは、自分自身も楽しいですし手応えを感じますよね。

そんな方々に今まで自分がやってきた登山の経験や知識を伝えるのは、受講される方のためにもなりますし、自分自身のやり甲斐にもなっています。

ココヘリ安全登山学校を受講する方の特長はありますか。

天野さん:ココヘリというサービス自体が今までにない登山のインフラ。それにお金を払って入会して安全を担保したいという人なので、ココヘリ安全登山学校に参加する方は総じて意欲的ですね。

ココヘリへ積極的に加入するということで、山岳会などに属していない未組織のソロ登山者が多いイメージもあります。けれども必ずしもソロで登りたいという訳ではなく、これまで出会う機会がなかっただけで、仲間がいれば一緒に登りたいと考えているはずです。

ソロ登山をする不安があるからこそココヘリにも積極的に加入する訳で、ココヘリ安全登山学校が仲間を見つける出会いの場にもなると良いですね。

登山は「究極の大人の行為」

天野さんの登山観

そんな天野さんにとっての「登山」とは?を伺いました。

天野さんは以前も「山で死ぬことは必ずしも不幸なことではない」とおっしゃっていましたが。

天野さん:登山はルールのない自由なスポーツであるべきだと思います。極論すると、山で何があっても自分で受け容れることができれば、何をしても良いと思うのです。

「こうした方が安全」「こうした方が効率的」というセオリーはありますが、絶対にそれを守らなければいけないというルールはありません。そういう意味では、究極の大人の行為が登山ですよね。

とはいえ、残された家族や友人にとってはやはり悲しいですよね。

天野さん:はい。自由な行動ではあるべきですが、やっぱり安全に登れた方が良いですね。大好きな山で遭難した登山者本人にとっては本望であっても、周囲の人や家族には迷惑がかかるし悲しい思いもさせてしまいます。

なので、特に家族には理解してもらう努力は必要ではないかと。ココヘリ安全登山学校を通じて、正しい知識・技術を身に付けるのも、そのひとつではないでしょうか。

その上で自分が判断することであれば、自由に登山を楽しんで欲しいです。狭い視野で登山を捉えて欲しくはないですね。

山に対する「向き合い方」を伝えたい

天野さんのガイドとしてのスタンス

そんな天野さんですが、やはり安全登山のためにするべきことはあると考えています。では、どんな点を重視してガイド活動に取り組んでいるのでしょうか。

安全登山のために大切なことは何だと考えていますか。

天野さん:事故には必ず原因があります。もちろん人間の行為なので、完璧ということはありえない。心の迷いなど、心理的なバイアスが事故の副因になることは多いですね。

それが登山の面白さでもあるのですが、本人も望まない「何でこんなところで……」という事故は減らすことができると思いますし、なくす努力をしていくべきですよね。多くの事故は防げるもの、これは自分に対しての自戒も含めて感じています。

受講生の方に特に伝えたいことを教えてください。

天野さん:いちばん伝えたいのは「山に対する向き合い方」ですね。細かい技術に関しては、後からいくらでも身に付けることが可能です。まずは山や自然に対する敬意だったり怖さを知って欲しい、ちっぽけな人間が到底敵うものではないですから。

そういう根源的なスタンスは、WEBやSNSでは身に付けられないものですね。

天野さん:現代は情報過多の時代ですよね。昔は情報がなかったから不安が膨らんで慎重にならざるを得なかったのですが、現在はリアルタイムで情報が入手できる。もちろん良い面もあるのですが、想像力を働かせにくくなって来ていますよね。けれども、人間が自然のスケールや脅威に敵わないという部分は、何も変わっていませんから。

プロの思考プロセスを伝えたい

登山者の可能性を広げたい

最後に、ココヘリ安全登山学校で実現したいことや受講を検討されている方へのメッセージを、天野さんに伺いました。

ココヘリ安全登山学校で実際にどんな活動をしたいと考えていますか。

天野さん:ステップアップのために受講生の方々からニーズが多い、バリエーションルートに行きたい、岩場を安全に歩くテクニックを知りたい、読図能力を高めたい、などは自分の得意分野でもあるので、ぜひ取り組んで行きたいですね。

また初心者にとっては、岩場での行動などに漠然とした恐怖感を抱きがちですよね。けれども実際にやってみると、意外にできてしまう人も多いんです。私がきちんと安全管理をした上で、受講生の皆さんの可能性を広げるお手伝いができれば嬉しいですね。

これからココヘリ安全登山学校を受講する方へメッセージをお願いします。

天野さん:ココヘリを持っているから遭難しないという訳ではありません。逆にココヘリを持っているからと言って無謀な登山をする人もいないでしょう。あくまでも万が一の遭難事故発生時のためのシステムですから、登山の安全性自体が高まる訳ではありません。

より安全な登山を実現するために、ココヘリ安全登山学校を利用して欲しいと思います。独学で登山を学ぶのもひとつの方法ですが、短期間で理解するのは難しいものです。リアルの場で誰かから学ぶことは知識・技術を身につける近道になりますよ。

登山は自由なスポーツなので誰でも始めることが可能な反面、お金を払って習う敷居が高いと思います。けれども他のスポーツであれば、コーチから習うじゃないですか。しかも登山には他のスポーツにない「危険」が伴います。

実地講習では「なぜルートのこちら側を通ったのか」など、私の思考プロセスも伝えるようにしています。山のプロが何気なく実践していることの意味や理由を学んで、自立した登山者になるためのスキルを身に付けて欲しいですね。

最後に、ココヘリ安全登山学校への今後の期待を教えてください。

天野さん:自分ひとりで山と対峙するのもひとつのスタイルですが、人と向き合うのも違った魅力があります。同じ釜の飯を食う……みたいな良い関係性ができて仲間が増えたら楽しいですよね。

受講してくれた方が、事故を起こさず安全に登山を続けて行って、それが広がっていけば嬉しいです。

ココヘリ安全登山学校

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