2024-10-13
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災害時の備蓄にもなる 山ごはんの大定番 尾西食品のアルファ米

13(トザン)日は【AJ MALLの日】特集|安全登山のための道具術

伊藤 俊明 
ライター・編集者

本好きが高じて企画・編集会社に勤務し、アウトドアをはじめとす る趣味の雑誌編集に関わったのちに独立。思う存分スキーを楽しむ ために夏に頑張るアリンコ系ライター・編集者。インタビューや道 具の紹介、解説記事が得意分野。

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 食事は、安全な登山に欠かせないエネルギー補給であると同時に、山の楽しみのひとつでもあります。絶景を前にしながら、空腹や心地よい達成感とともに味わう食事は格別なもの。計画や準備の段階で「何を食べようか」とメニューを考えるのも楽しい時間です。

 小さなクッカーやシングルバーナーのような限られた道具と食材で調理から楽しむ人もいますが、登山者の食事といえば、主流はアルファ米やフリーズドライ、乾麺などの乾燥食品です。軽量で持ち運びしやすく、お湯や水で簡単・短時間に調理でき、さまざまなメニューがあって、しかもおいしく食べられる山の食事の王道です。

 ひとくちに乾燥食品といっても多くの選択肢がありますが、今回は日本人の主食である米にフォーカスして、アルファ米をご紹介します。登山者なら誰もが食べたことがある尾西食品で広報を担当している栗原恵美里さんに聞きました。

尾西食品株式会社広報室の栗原恵美里さん。防災士・災害備蓄管理士の資格も持つ才女。

炊きたてのふっくらもっちり食感をキープ

 ふだん何気なく選んで食べているアルファ米とは一体どんなものか。同列に語られることが多いフリーズドライとは何が違うのでしょうか。

「アルファ米は、炊いたお米を急速に乾燥させたものです。お米の主成分であるデンプンは、硬い生米のときはベータ化という状態にあります。ベータ化の状態ですと人間は消化しにくいのですが、デンプンは炊いたり蒸したりという加熱調理をすることで消化できるようになります。この状態をアルファ化といいます。加熱調理したお米の、アルファ化の状態を保ったままで急速乾燥させたのがアルファ米です。炊き上がったごはんから水分だけを抜いている状態ですから、ここにお水やお湯を入れるだけでふっくら、もっちりとしたおいしいごはんに戻ります」

 一方のフリーズドライは、できあがったものを急速に冷凍し、乾燥させて作ったもの。固体が液体にならずに直接気体になる「昇華」という現象を利用して食材の水分を取り除いています。水分が抜けたあとは素材にスポンジ状に穴が開くため、お湯を入れると短時間で食べられますが、食感には違いが出ます。

 ふっくらもっちりが良しとされる「ごはん」の場合は、この食感の違いはデメリットのように思えますが、米だけでなくさまざまなメニューが揃うのがフリーズドライの大きなメリットです。たとえば、「アルファ米の白いごはんにフリーズドライのカレーをかける」のも、登山者には定番の組み合わせ。製法による違いを知っておくことで、より好みのものを選べるようになります。

潜水艦で食べる軍糧食から平和的な食料へ

 登山者にとっては馴染み深い「尾西のアルファ米」が開発されたのは古く、1944年のことでした。

 創業者の尾西敏保(はるやす)は、第一次世界大戦末期に広島県・呉の海兵団に入隊して潜水艦に乗務しました。1932年に退役すると製薬会社勤務を経て、3年後に尾西食品の前身である尾西食品研究所を設立します。ここで、火を使わずに水を注ぐだけでつきたてのお餅になる「即席餅の素」や「葛練りの素」などの製品を開発しました。

「“餅の素”や“葛練りの素”は、軍事食糧として納入されて好評だったそうです。その後、尾西は海軍の要請を受けて、大阪大学産業化学研究所の二國二郎博士と共同でアルファ米の開発に着手します。戦争のような極限状況にあっても、日本人はやっぱりお米が食べたい。尾西自身が潜水艦に乗ってそんな思いを経験していたことも開発の原動力になったようです」

 こうして誕生したアルファ米は、当時は「乾燥飯」とよばれていました。軽量で保存性に優れ、洗わず、煮炊きせず、水を注ぐだけでできあがる。ジャングルでは煙を上げず、潜水艦は浮上する必要がなく、水さえあればおいしく食べられる乾燥飯は、軍糧食として終戦までに6千200トンが納入されたそうです。餅の素を含めると2万7千300トン。なんと、約3億食分にも及びました。

前身となる尾西食品研究所は1935年創業。アルファ米は軍糧食として開発された。

 時代は流れて、乾燥飯はアルファ米と名前を変えました。いまでは、私たち登山者の山ごはんとしてはもちろん、非常時の保存食品や宇宙食としても広く利用されるようになりました。

「長年の間に製造機械は進化しましたが、炊いたお米を乾燥させるという製法自体は変わっていません。大きく進化したのは包装資材で、賞味期限が5年半に伸びました」

 1995年、一般の人にもアルファ米が注目されるようになる大きな出来事がありました。阪神・淡路大震災です。それまで非常食といえば乾パンが主流でしたが、長く続く被災生活で「温かいものが食べたい、ごはんが食べたい」とアルファ米が注目されるようになりました。その後、各市町村が市民のための備蓄を進めるようになり、市民の防災意識も高まりましたが、乾パンに比べるとアルファ米は保存期間が短いのが難点でした。

「震災後はご家庭でも備蓄食にしていただけるようになりましたが、タンスの奥にしまいこんで気づいたらだいぶ時間が経っていたという話も多くあって、押入れではなくパントリーで保存できる商品をと、パッケージを見直しました」

 余談になりますが、日本で賞味期限表示が導入されたのは1985年のことでした。その後1995年に、それまで製造年月日を表示することとされていた制度が期限表示をするように変更され、2年の移行期間を経て1997年4月から完全に転換されました。

 阪神・淡路大震災が起きた1995年はまさに制度が変更されたばかりの頃です。賞味期限や消費期限という概念はまだ一般的ではありませんでしたが、当時のアルファ米の賞味期限は3年程度だったそうです。

「アルファ米は水分が抜けているので微生物が繁殖することはなく、腐敗はしません。ただしお米の油分は残っているので酸化は進みます。これを避けるためにパッケージを光と酸素を通さないアルミ蒸着の袋に変えて、脱酸素剤も入れるようになりました」

 山でお湯をそそぐとき、ついつい取り出すのを忘れがちな「アレ」には、酸素を取り除いて長期保存を可能にするという大事な役目がありました。

 製法は変わっていませんが、味わいは進化しています。

「工程自体に変わりはありませんが“浸漬”といってお米に水を含ませる時間や加熱調理の時間はいつも同じではなく、お米の種類や産地、収穫した年度によって、おいしくなるように調整しています」

 年によってばらつきがあるため米の品種は公表していませんが、いまは秋田、新潟産の米が多いそうです。さらに、だれもが安心して食べられるように、多くの製品がアレルギー対応になっています。これもユーザーの声を受けて実現しました。

「東日本大震災のとき、“アレルギー対応のものがなくて食事ができなかった”という声がありました。そのころも実は中身は同じでしたが、前面に打ち出してはいなかったので商品にわかりやすく記載するようになりました。入札の際にも、アレルギー物質である特定原材料等28品目の不使用が要件になることが増えてきました。たとえば東京の場合は、すでにほとんどの市区町村がそうなっています」

 アルファ米がふたたび大きく注目されるようになったのは阪神・淡路大震災の直後。備蓄食として見直され、包装資材の進化によって賞味期限は5年半に伸びた。多くの製品がアレルギー対応で、だれもが安心して食べられるのもポイント。

 現在、アレルギー物質を含まない製品には、パケージ前面に「アレルギー物質(特定原材料等)28品目不使用」の表示がされています。アレルギーのほかにも、イスラム教で禁止されているものが含まれない「ハラール認証」を受けた製品もあります。こうした対応は、いうまでもなく、非常食としてだれもが安心して口にできるようにするためのものです。腹を満たすための軍糧食だったアルファ米は、こうして平和的な食糧へと生まれ変わりました。

 昨今、災害時のための備蓄食料を使いながら、常に新しいものにしておく「ローリングストック」が推奨されていますが、お気づきのとおり、登山者にとって尾西のアルファ米はこのローリングストックにうってつけの食料です。

水やお湯をそそぐだけの「携帯おにぎり」。技ありのパッケージで握らずにできる人気商品だが、じつはこれ、日本を感じさせるメニューとして、国際線の機内食用に開発されたのがはじまり。

 登山道具を詰め込んだ「非常持ち出しバックパック」の隣には、すでに尾西のアルファ米をストックしているという人もいるかもしれません。山に出かけるときに持ち出したら、忘れないうちにお気に入りを追加しておきましょう。山ごはんの準備も、防災対策も、これでバッチリです。

(文=伊藤 俊明 写真=岡野朋之)

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