【連載企画】COCOHELI STORIES 「いってきます」と「おかえりなさい」の間に。


vol.46 登山道整備という仕事を通して、自然に負荷をかけない方法で山を守ろうとしている外薗さんご夫妻。いつも山に行くときは一緒だという仲良しご夫婦の日常にお邪魔しました。

外薗さん夫妻が山に向かうようになった最初のきっかけは、娘さんと始めた家族キャンプ。娘さんが成長し、キャンプから距離ができ始めた頃、妻のかおりさんの中で山に行きたい気持ちがふつふつと沸いてきたそうです。「実は、母が40代のころに登山を始め、北アルプスまでいくようになり、私も一緒に縦走したりしていたんです。子育てや腰の手術でしばらく離れていましたが、キャンプをしながら山を眺めていたら、また山に登りたいと思うようになりました」とかおりさん。外薗さんは、興味がないものには動かないタイプ(笑)そんな外薗さんの性格を熟知しているかおりさんは、いきなり登山をしようと誘うのではなく、これなら興味を持ってくれそうだと“地図読みハイク”に誘ったそうです。「地図って聞いたら興味が出てきて、“じゃあ行ってみようかな”と思ったんです」と外薗さん。そうして御岳山での地図読みハイクが、夫婦で歩く最初の山に。


「山へ行っているうちに、テント泊を始めました。テントを担ぐための体力が欲しくて、ロードランを始めたんです。それまで走る習慣なんてなかったので最初は大変でした。そんな中で、UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)のボランティアに参加することに。夜通し走るランナーを見て、“すごい世界だな”と思いました。そこからトレランもするようになり、100マイルも完走できました」と外薗さん。その変化をそばで見ていたかおりさんは、「なんだか山に私よりハマっていって(笑)。私は景色を楽しむタイプなんですが、夫はどんどんアルプスの縦走とかも誘ってくるので、ついていくのが大変な時もありました」と笑います。

お二人に安全登山で気を付けていること伺うと、「補給のタイミングはすごく気にしています。最初の頃は失敗も多くて、エネルギーが切れると判断力も鈍る。だから“少し早め、少し多め”に食べるようにしています。最も大事にしていることは必ず無事に帰ることなので、とにかく安全第一。天気が崩れそうならプランを変えたり、躊躇せず戻る判断も大事だと思っています」と外薗さん。「最近は、補給や休憩もだいぶ私のペースに合わせてくれるようになりました(笑)。とにかく“安全に帰る”のがわが家のルールです」とかおりさん。


ココヘリ入会のきっかけを伺うと、「夫婦で泊まりの山に出かけるたびに、家にひとり、心よく送り出してくれる娘の存在がいつも頭にありました。娘はワーストケースを考えるタイプで、“二人が山で遭難したら何をすべきか”を心配しながら考えていたようです。だからこそ、登山計画を丁寧に作り、必ず提出し、行程も共有していました。そんなとき知ったのがココヘリ。もし何かあっても、ちゃんと見つけてもらえるようにしておきたい。娘に“この番号に電話すればいい”という安心を渡したいと思って加入しました」と外薗さん。「心配している娘に“もしもの時はここにかけてね”と言えることが、とても安心になりました」とかおりさん。今も娘さんに「この時間までに“下山したよ”の連絡がなかったら、ココヘリに電話してねと伝えてから山にいっています」と外薗さん。独立した娘さんと離れて暮らす今も続く、“家族の安全の約束”なんだそうです。

トレランに関わりながら山を見つめるうちに、外薗さんは“道そのもの”に意識が向くようになったそうです。「雨が降ると道がすぐえぐれたり崩れたりします。走るだけじゃなく、直す側にも回りたいと思うようになりました。ボランティアでの登山道整備を経たのち、会社員を早期退職したのを機に、北海道大雪山で本格的な登山道整備を経験しました。そこで思っていた以上に心を動かされました。山の道って、人が歩きやすくするために作るんじゃなくて、自然の本来の姿に近づけてあげる。そうすると崩れにくくなり、歩きやすい状態を長く保てることになるんです」と外薗さん。


そのためには、自然を観察することがとても大切なんだとか。「地形や土や植物の状態を見て、水の流れを読む。自然のしくみに合わせていく仕事です。整備で使う木材は倒木を活かすことが多いですが、時には枯損木を使う場合もあります。立ち枯れの木を倒すときは一番緊張します」と外薗さん。
登山道整備を続ける中で、外薗さんには一つの願いがあります。「登山道整備が若い世代の仕事として成り立つようになってほしい。ボランティアだけでは成り立ちません」と外薗さん。「富士・箱根・伊豆へ1時間圏内でアクセスできる土地に移住したのも、山との距離をもっと近くするためでした。できるだけ長く道を直していきたいです。整備した場所を季節ごとに訪れて、“あれからどうなったかな”と見るのが本当に楽しいんです」と外薗さん。

山で過ごす時間が、楽しみであり、暮らしであり、誰かの安全にもつながっていく。
これからも静かに、確実に、山の未来を支えていく外薗さんご夫婦にココヘリは寄り添い続けます。
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